アメリカ英語とイギリス英語は何が違う?見極めるポイントとマーケティングの活用方法

海外向けのコンテンツを作るときは、母国語やその地域で話されている言語を使う必要があります。

世界中で話されている英語の中でも、特に多くの人に使われているのが、「アメリカ英語」と「イギリス英語」です。しかし、2つの英語には多くの違いがあるため、単にコピーするだけでは正しいコンテンツを制作できません。

この記事では、アメリカ英語とイギリス英語それぞれの特徴や、異なるポイント、海外向けコンテンツ制作やマーケティングではどちらを優先すべきかについて解説します。

アメリカ英語とイギリス英語の特徴

まずは、アメリカ英語とイギリス英語の特徴について、簡単におさらいしてみましょう。

英語は186ヶ国で話されている世界最大の言語であり、実用レベルで使用している人は世界人口の5分の1にあたる約15.2億人もいます。

そのうちネイティブスピーカーは25%(約3.8億人)に過ぎず、第二言語として学ぶ人口は75%(約11.4億人)を占めています。

近年では、世界中のWebサイト全体の半数以上、52.1%で英語が使用されているデータもあります。

アメリカ英語を使う地域と比べると、イギリス英語を使う地域の方が多数派です。なぜなら、19世紀半ば頃から20世紀初頭までに最盛期を迎えたイギリス帝国時代に、植民地で公用語として使われた歴史があるためです。

一方でアメリカ英語は、17世紀にアメリカ大陸へ移住したイギリス人の英語がネイティブアメリカンや他国移民の言語と混ざり合いながら変化した言語です。後に植民地やアメリカ文化の影響を受けた地域で広まりました。

このようにアメリカ英語とイギリス英語は世界中で多くの話者がいますが、それぞれの印象や特徴が大きく異なることも把握しておきましょう。

アメリカ英語イギリス英語
・イギリス共通言語であったローティック・スピーチ(Rを発音する)がベース
・ポップカルチャーとの結び付きが強い
・親しみやすくフランクな印象
・日本では学習しやすい
・フランス語の影響を受けている(主に11世紀と18世紀)
・綴り通りの発音が多い
・国際会議などで使用されている
・洗練されていて上品な印象

なお、日本の英語教育は、第二次世界大戦後の教育制度形成の経緯により、アメリカ英語をベースとしています。

アメリカ英語とイギリス英語の代表的な違いは?

英語のコンテンツを制作する場合は、アメリカ英語とイギリス英語を理解し、微妙なニュアンスを反映してローカライズする必要があります。

英語話者のターゲットに正しく伝わるコンテンツを作るために、具体的な違いを見てみましょう。

スペル

アメリカ英語とイギリス英語では、特定の単語で語尾のスペルが入れ替わるなどの変化があります。

ただし、分野によっては両方の単語を使い分けるケースもあり、例外ルールもあります。

スペルの変化アメリカ英語イギリス英語
er(米)→ re(英)centercentre
ze(米)→ se(英)organize
optimize
organise
optimise
or(米)→ our(英)color
labor
colour
labour
e(米)→ ae/oe(英)maneuver
pediatric
manoeuvre
paediatric
og(米)→ ogue(英)catalog
analogue
catalogue
analogue

発音

アメリカ英語とイギリス英語の発音の違いで、代表的なものに「R」「T」「A」の3つがあります。

Rの発音

アメリカ英語では、Rを発音する際に舌を巻くローティック・スピーチが基本のため「ル」の音がはっきり聞こえます。

一方、イギリスでは18世紀後半の産業革命や農業革命の頃、裕福な南部都市の上層階級の人々が柔らかいRの発音に変化させたため、Rの音があまり聞こえない発音が広まりました。

例えば「car」はアメリカ英語だと「カール」に聞こえますが、イギリス英語だと「カー」のように聞こえます。ただし、イギリス英語でもRの後に母音がくる場合は、Rもはっきりと発音されます。

Tの発音

アメリカ英語のTまたはDの発音は、LやDに近い柔らかい「ラ」に聞こえるフラッピングと呼ばれる破裂音で発音されます。

一方、イギリス英語の場合は、Tを明確に発音します。

例えば「water」はアメリカ英語では「ウォーラー」、イギリス英語では「ウォーター」に聞こえます。

Aの発音

Aの発音はアメリカ英語では「エィ」、イギリス英語では「ア」と発音されます。よく使われる「can」という単語を発音する場合、アメリカ英語では「キィャン」「キィャーン」と発音し、イギリス英語では「カン」といった発音です。「tomato」はアメリカ英語で「トメィト」、イギリス英語では「トマト」と聞こえます。

文法

アメリカ英語とイギリス英語の代表的な文法的な違いを3つ紹介します。

過去形・過去分詞の末尾

アメリカ英語では、末尾がedになるものも、イギリス英語だとtになることがあります。

現在形アメリカ英語の過去形 / 過去分詞イギリス英語の過去形 / 過去分詞
burnburned  / burnedburnt / burnt
learnlearned / learnedlearnt / learnt
dreamdreamed / dreamtdreamt / dreamt

集合名詞

アメリカ英語の集合名詞は単数扱いなので、例えばbe動詞ならば「is」を使います。一方、イギリス英語では複数扱いで、be動詞は「are」を使います。

例:家族は私にとって重要です。

  • アメリカ英語 → My family is important to me.
  • イギリス英語 → My family are important to me.

過去の表現方法

現在に関わる過去を表す場合、アメリカ英語は過去形・現在完了形のどちらも使いますが、イギリス英語では現在完了形を使うことが一般的です。

例:私は寝る前に歯を磨きました。

  • アメリカ英語 → I brushed my teeth before going to bed.
  • イギリス英語 → I have brushed my teeth before going to bed.

単語

アメリカ英語とイギリス英語では、同じスペルでも意味が異なる単語や、意味は同じでもスペルの異なる単語があります。

同じスペルの単語アメリカ英語イギリス英語
chipsポテトチップスフライドポテト
pantsズボン下着
apartment共同住宅居住区画
first floor1階2階
bomb大失敗大成功
subway地下鉄歩行者用地下道
意味が同じ単語アメリカ英語イギリス英語
電話する call / phonering
駐車場parking lot car park
休暇vacationholiday
映画moviefilm
請求書checkbill
ごみ箱garbage candustbin

その他の表現

アメリカ英語とイギリス英語で日常的に使われるもので、違いが一目でわかる表記もあります。

項目アメリカ英語イギリス英語
日付表記month / day / yearday / month / year
時刻表記9時10分(nine ten)
9時15分(nine fifteen)
9時30分(nine thirty)
9時45分(nine forty-five)
9時10分(ten past nine)
9時15分(quarter past nine)
9時30分(half past nine)
9時45分(quarter to ten)
敬称のピリオド「.」Dr., Mr., Mrs., Ms.など、ピリオドを使用するのが一般的Dr, Mr, Mrs, Msなどにピリオドを使用しない場合がある

ほかにも、海外で使われる重さの単位としてオンス(ounce)やポンド(pound)がありますが、イギリスでは体重などでストーン(stone)という単位が使われます。

また、イギリスでは日本と同じ温度の単位である摂氏(Celsius)が使われますが、アメリカでは華氏(Fahrenheit)が使われるのが一般的です。

英語習得を目指すならどちらを学ぶべき?

アメリカ英語とイギリス英語の違いは、長い歴史の中で派生していった文化的な違いが主であり、どちらが正しいということではありません。

現在は世界的なポップカルチャーの流行の影響で、イギリス英語を使う地域でもアメリカ英語はかなり浸透しています。

英語習得を目指す場合、アメリカ国内がビジネスのターゲットならば、アメリカ英語を学ぶ方が効率的です。

一方、イギリス英語は多くの国で国際会議でも使われる「世界の標準語」として認識されているため、学んでおくとヨーロッパやアフリカ、東南アジアの広い地域で使えます。

日本の学校教育はアメリカ英語がベースのため、アメリカ英語の方が学びやすい環境といえるでしょう。しかし、「巻き舌が少ない」「綴り通りの発音が多い」など、イギリス英語の方が発音しやすいと感じる人もいます。

総合的に考えると、アメリカ英語とイギリス英語の習得難易度の差はそれほどないため、目的や将来性を考慮して選ぶと良いでしょう。

アメリカ英語・イギリス英語のマーケティング活用方法

海外進出を目的にマーケティング施策を行うのであれば、英語表記のサイト運営は欠かせません。ターゲットに適した英語を使うことで、効果的な集客が可能になります。

ここからは、ShiroKuの海外マーケティングでもお客様からよく質問をいただく、アメリカ英語・イギリス英語それぞれの活用方法や注意点を解説します。

SEOコンテンツはどちらの英語で制作するべき?

海外向けサイトを運営する際は、ターゲットとなる市場に応じた言語表記を選択することが重要です。

例えばイギリス市場をターゲットにしたサイトを制作する場合、イギリス英語の単語や綴り、文法などで忠実な表現が求められます。

サイトやコンテンツで適切な言語表記がされていないと、「自国の市場を重要視していない」と、閲覧ユーザーから悪い印象をもたれる可能性があります。

また、アメリカ・イギリスの検索市場で高いシェア率を誇るGoogleやBingなどの検索エンジンに評価されるためにも、両言語の違いを押さえた質の高いサイトやコンテンツを作ることが重要です。

アメリカ・イギリス両国において、検索エンジンはGoogleがトップを占めるものの、適したSEO施策は微妙に異なります。

微妙なニュアンスの違いは、ネイティブスピーカーでないと書き分けが難しいため、専門的な知識を持つ人材が豊富な制作会社を探す必要があります。

Webサイト設計における言語の選択基準

既存のサイトから新たに海外向けのサイト設計を行う場合、ローカライズを検討する要素は3つあります。

  • 翻訳する言語の選択
  • ターゲットに好まれるデザイン・画像の選択
  • 国や文化の特性を踏まえたコンテンツ内容

例えば、イギリス市場向けのサイトではイギリス英語を使用し、現地の文化に適したデザインやコンテンツを提供することで、ユーザーの信頼を得やすくなります。

Webサイトの機械翻訳は危険!

よくやりがちなNG事例としては、アメリカ向けサイトの内容をそのままコピーして、イギリス向けのサイトなどに改修することです。これは非常に不適切で、日本人には一見同じような英語表記に見えても、ネイティブが見ればすぐにおかしな内容だと判断されます。

このような対応はグローバル展開においては致命的であり、一度失った悪いイメージは回復しにくく、企業のブランドの印象を大きく損ねる恐れがあります。

「アメリカ英語話者」VS「イギリス英語話者」でたびたび議論が起こっているように、両国はお互いの言語に誇りや強いこだわりを持つユーザーが多いため注意しましょう。

広告コピーやセールスライティングにおける違い

広告コピーやセールスライティングでは、ターゲットに与える印象がコンバージョンに直接関わるため、使用する言語の選択は非常に重要です。

一般的にアメリカ英語への印象は「標準的」「聞き取りやすい」「カジュアル」「フレンドリー」といったフランクさに特徴があります。

一方でイギリス英語は、「正統派」「フォーマル」「知的」「セクシー」「信頼性が高い」「堅苦しい」というイメージです。

ビジュアルで強く訴求できる広告のクリエイティブでは、ブランドイメージに合った言語選びも考慮する必要があります。

英語を選択する際は、ターゲットとする国や市場だけでなく、多角的な視点を踏まえて検討しましょう。

動画コンテンツ・SNSマーケティングでの言語戦略

海外市場においても、ターゲットのファン化を促せるコンテンツマーケティングは有効な手段です。

コンテンツマーケティング先進国であるアメリカだけでなく、世界中で多くの企業が動画やSNSなどコンテンツを使った手法が採られています。

特に特定の地域にアプローチする際に、ソーシャルメディアの活用が注目されています。

ソーシャルメディアのコンテンツは現地の英語表現を使うと親近感を与えやすいため、ターゲットと長期的な関係性を築き、信頼性を獲得するのに効果的です。

アメリカ、イギリスともにTikTokやYouTubeなど音声コンテンツが人気のため、発音の印象にも注意する必要があります。

目的に応じて英語を使い分けよう

英語でのコンテンツ制作は、海外市場への進出を目指す多くの企業が直面する問題です。

ターゲットのニーズに応え、製品やブランドに興味と信頼性を感じてもらうには、適切にローカライズされた英語表現を用いることが必須です。そのため、アメリカ英語とイギリス英語の特徴を理解し、使い分けることを意識しましょう。

しかし、ネイティブレベルでアメリカ英語とイギリス英語を使い分けることは難易度が高く、ブランディングやマーケティング、SEO戦略に適した文章作成は非常に困難です。

ターゲットに合わせて正確な英語で表現するには、専門的なスキルを持つ人材を活用できるプロに相談することが効率的です。

海外SEO対策の相談ならShiroKuへ

ShiroKu株式会社では、海外SEO対策や多言語コンテンツ制作、インバウンド集客など、海外向けマーケティングサービスを手掛けています。

経験豊富なネイティブスタッフが多数在籍し、海外の知見を活かして戦略設計からサイト制作、集客、分析、改善まで一貫体制で集客をサポートいたします。

自社サイトやサービスの海外展開を考えている方は、ぜひShiroKuにご相談ください。

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執筆者

八十島 匠(やそじま たくみ)

フリーランスライターとして5年ほど活動したのち、独学でWebマーケティングを学び、大手観光メディアを運営する会社のディレクターに抜擢。旅行・観光系ジャンルを中心に、美容・インテリア・グルメ・ファッション・人材・テクノロジーなど、さまざまなメディアの立ち上げに従事。SNS運用や縦型動画をはじめとした最新マーケティング・海外SEO戦略にも幅広い知見を持つ。

監修者

Kai Wasson(カイ・ワッソン)

日英翻訳で10年以上の経験を持つプロフェッショナル。アメリカマーケティングチームの一員として、多言語コンテンツの制作やローカライゼーションを担当。多国籍企業のマーケティング施策を成功に導くため、ターゲット国の属性や習慣、文化的ニュアンスを理解しながら正確で効果的な翻訳を行う。